失敗が成功を教える
迅速で正しい決定は一般的に有利に機能します
しかしながら実社会では、素早く下した結論が正しいとは限らないなど、「決定の適切さ」と「決定の迅速さ」は必ずしも両立するとは限りません
そこで以下の論文では、ラットが手がかりを参照し、2つの穴のいずれかに鼻を突く必要があるオペラントタスクにおける学習行動を調査しました
Yawata et al. Answering hastily regards learning. PLOS ONE, 13(4):e0195404, 2018.
22匹のラットはすべて、テストから4日以内に学習基準である80%の正解率に達しましたが、学習基準に達するために費やしたセッション数は多様でした
個々の分析により、応答の平均待ち時間は、学習するまでのセッション数と負の相関関係があることが明らかになり、誤った選択までの時間が長いラットの方が好成績を残すことが見出されました
このことから、成功体験そのものよりも、じっくり時間をかけて考慮して失敗する方が、学習の成立にとって重要であることが示されました
また、マウスに迷路学習をさせた以下の論文では、学習の初期にたくさん失敗した、失敗率の高いマウスの方が最終的な学習スピードが早く、学習を達成するまでの日数が短くて済むという結果が示されています
Igata et al. Early failures benefit subsequent task performance. Sci Rep, 6:21293, 2016.
これらの研究から、学習初期の失敗は悪いことではなく、むしろ成功するために必要なものであるということが示唆されています
例えば、バドミントンの小学生の大会をみると、コーチや保護者は子どもを勝たせたいので一生懸命勝ち方を教えます
ウォーミングアップから一日の行動を管理し、対戦相手に勝つための戦術を指示します
コーチ、保護者は今日に至るまでに様々な失敗を経験して勝ち方や成功するための方法を学びましたが、子ども達は失敗せずにすぐに答えを教えられています
強いジュニアチームほど、勝ち方の方法を知っているので行動を管理し、戦術を教えます
一見、ジュニア期に勝てるので良いように感じますが、大学生を指導している立場として、ジュニア期に勝っていた選手が大学では活躍できない理由がそこにあるような気がします
たくさんの失敗を通して多くの学びを深めた大学生は自分で考え課題を克服していきますが、コーチ、保護者に答えを教えられて育ってきた大学生は考える力が乏しく、失敗を学びに変えることができません
次第に意欲をなくし、将来何をしたらよいのかわからずに挫折していきます
ただし、敗けた方が良いということではありません
自ら考えて勝つことができた成功体験は自信になります
敗けてもそこから何も学ばなければ敗け続けます
失敗から学ぶことが重要であり、学びを引き出すことがコーチ、保護者の役割です
ジュニア期の失敗が将来の成功に影響します
答えを教えすぎず、考えさせ、失敗を見守っていきましょう